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『とにかく、一度やってみよ。』 わたしのReストーリー

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鉛みたいに重い体を引きずって、
一段一段歩道橋を上っていく。

最近何をしていても気が晴れない。
これから始まるゼミの謝恩会もあまり行きたくない。
原因は分かっている。

「社会人、か」

去年の夏前に、内定をもらった。
第一志望、ではなかったけど業種は
同じだし、シゴトの内容だって希望通りだ。

だけど、社会人としてちゃんとやっていけるの?
という不安がワタシを苦しめている。

階段を上っているから息苦しいのか
将来に不安を感じるから息苦しいのか、
分からないまま歩道橋のてっぺんにたどりつく。

一面の夕焼け。
沈みかけの夕陽が街を焼いている。
その鮮やか過ぎる色が、余計にワタシを不安にさせた。

休むように手すりへもたれかかり、オレンジ色に燃える街を
ぼんやりと見つめていると、不安の虫が動き出す。

ワタシが困ったらいつも助けてくれた頼れる姉は、
最近夜遅くに疲れた顔をして帰ってくる。

そんな彼女から聞かされるシゴトの話は、
ワタシのココロをますます暗くする。

逃げ出したい。

今スグ逃げ出して、もう一回就活をやり直したい。
アレほど辛く苦しかった就活が、今ではディズニーシーの
アトラクションのようにさえ思える。

そういえばアソコに初めて行ったのは、ユウジとだった。
タワーオブテラーへ入ろうとせがむユウジに、
半ば怒りながら言ったものだ。「絶対ムリ!!!!」って。

すると、それまで怖がるワタシをゲラゲラ笑っていた
ユウジは、ちょっとマジメな顔になってこう言った。

『カナはいつもそう。始めてもないのに「ムリ」。
 なんで挑戦しないの?やってみなきゃ分からないだろ!!』

…。

そうだ。

やる前から“ムリ”って決めつけて、
結局ワタシは前へ進んでいなかった。
やってみなくちゃ分からないんだよね、ユウジ。

そう思ったとき、今まで不安の2文字でどんよりと
曇っていた気持ちが、ウソのように晴れていく。
と同時に、思わず小声でつぶやいていた。

「とにかく、一度やってみよ。」

ん?謝恩会の時間!!

約束の時間まであと5分しかない。
慌ててワタシは手すりから身を離し、
歩道橋の向こう側へ小走りで歩き出す。

向こうから、どこかで見たような男の人が歩いてきた。
ユウジだ。どこか自信にあふれた顔で、ユウジがこっちに来る。
ワタシたちは歩道橋の真ん中で立ち止まり、同時に口を開く。

「おめでとう、というか、ありがとう」

と。

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